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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)5624号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、本件事故の状況

<証拠>によれば左の事実が認められる。

本件現場は東西と南北に通ずる道路の交差した信号機による交通整理の行われている交差点内であつて、東西(但車道部分)、南北の各道路の巾員はそれぞれ約一五メートルであり、東西道路は歩車道の区別があり、いずれも諸車の交通頻繁なアスファルト舗装の道路である。

信号機の表示周期は東西信号は青五〇秒、黄七、五秒、赤二七、五秒、南北信号は青二四秒、黄三、五秒、赤五七、五秒である。

原告は原告車を運転して本件交差点を北から西に右折すべく前方の信号機の青色表示に従つて、交差点内に進入し、南からの対向車があつたため、交差点中央附近で右折待ちのため停車し、南北の信号が黄色表示になり、対向車がなくなつたので右折を開始した。

被告藤井は事故車を運転して前記交差点にさしかかり、前方の信号機が黄色表示を示したので前記交差点東詰に停車したこと、右停車位置は直前に小型貨物車が、右前にも小型貨物車が、右横にも別の小型貨物車が各停車しており自車の左側は単車か自転車が停車し、左前には車輛はなかつた状態であつた。

そして前方の信号機が青色表示になつたので、被告藤井は右横の車輌と併行に、前車とは四乃至五メートルの車間距離をおいて発進したが被告運転の車は出足が悪く右横の車輛からやや遅れ気味に同車より一メートル位後方を時速二〇乃至三〇キロメートルで交差点内に進入したところ、交差点内のほぼ中心にいた原告運転の普通乗用自動車を約二メートル手前で発見し、把手を左に切つたがまにあわず、原告運転の車輛左前部と自車右後輪部分と接触させた。

被告藤井は右の事故に関する刑事々件(業務上過失傷害被告事件)について生野簡易裁判所において無罪の確定判決を受けた事実を認めることができ、原告本人尋問の結果中、右認定に反する部分は前記証拠に照らし容易に採用しがたく、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

二、責任原因

(一) 被告藤井の過失

以上認定した事実に基づけば、被告藤井には前方不注意、ひいては交差点中心点付近で右折待機中の車両の有無、動静に注意し安全を確認して進行すべき注意義務に違背した過失があるものといわなければならない。蓋し本件にあつては原告車は信号機の表示に従い交差点中心点付近に進行し右折の機会を待つたものであつて、東西進行の車両としては自己の進路の信号機が青の表示となつたとしてもまず原告車の右折を先行せしむべきものであり、もしこれをしないときは右折車はいつまで待つても右折できないで中心点付近に立往生することとなり、かくては東西車両、殊に東行車両(事故車の対向車)の進路を阻害すること甚しく道路交通上に及ぼす危険は計り知れないものとなる虞れがあるものというべく、このような初歩的な注意義務を怠つた点において被告藤井は過失の責を免れることは到底できないものといわなければならない。もとより原告においても、結果的にみて割込みといわれるような形式で右折をしたことは軽率のそしりを免れずその重大な過失があるものといわざるを得ないとして、また叙上の判示は事故車の先行車に最も強く当てはまることであつて、事故車についてはこれに追従した点情状を酌むべき点が多いことは当然であるが、さればといつて以上の諸点から上記判示を覆すことはできない。これに対し被告は刑事上無罪となつたことを以て強くその無過失を主張するが、刑事上罪に問うかどうか、という点と民事上、生じた損害の負担の帰属を定めることとは自ら差異があり得るばかりでなく、本件の刑事判決は前記事情を考慮し刑責を問うべき違法性の軽微さに着目してなされたものと解する余地もあり、なお前記認定事実によれば事故車はかなり長時間に亘り信号まち停車しこの間に原告車の動静を把握する余裕は十分にあつたものとみられること、発進に当り出足遅れが原告車から見れば右折のための進路を譲つてくれたものとの判断を与える余地もあつたこと等の事情をも併せ考えれば、被告の主張は到底採用の限りではない。

(二) 被告会社の運行者免責の抗弁に対する判断

本件事故は前示の如き被告藤井の事故車運転上の過失によつて生じたものと認められるので、被告会社の免責の抗弁はその余の点を判断するまでもなく理由がないことが明らかである。<中略>

四。過失相殺

前掲事実に照らせば、原告にも重大な過失が存することは明白であり、証拠により認められる諸般の事情に照せば原告と被告藤井との過失割合は前者二対後者一とすることが相当であり、これらの事情を斟酌して被告らの賠償すべき額を算定すれば、前記合計額についてはこれを金二九万〇、七〇〇円とすべきである。

(寺本嘉弘)

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